釣具店で何度も曲げて選んだロッドなのに、実際のフィールドで投げてみると、なぜかしっくりこない。
反対に、何年も前に購入したロッドが、最新モデルへ買い替えたあとも一軍から外れない。
バスロッド選びには、長さや自重、弾性率といったスペックだけでは説明できない難しさがあります。
つり人社より2026年6月26日に発売された『Basser(バサー)2026年8月号』の特集テーマは、そんなロッド選びの奥深さに迫る「個性派バスロッド」です。

今月号に登場するのは、5ft台のショートロッドや8ftに近いロングロッドをはじめ、特殊なガイドシステム、チャンピオングリップ、ジャイアントベイト用ロッドなど、現在の標準から少し外れたロッドたち。
一見すると、かなりマニアックな特集に思えるかもしれません。
しかし、読み進めていくうちに見えてくるのは、奇抜さを狙った道具ではなく、特定の釣りを突き詰めた結果として生まれた必然的な個性です。
今回は、そんな『Basser 2026年8月号』の中から、特に印象に残った記事や、ロッド選びに対する考え方が変わったポイントをレビュー紹介します。

特集:個性派バスロッド

今月号のBasserでは、さまざまな個性派ロッドが取り上げられています。
ここでいう「個性派」とは、単に変わったロッドという意味ではありません。
特定の釣りを突き詰めていった結果、一般的な長さや構造から外れ、強い個性を持つようになったロッドが紹介されています。
今月号を読んでいると、万能性の高いロッドだけが優れているわけではないことがよく分かります。
むしろ、用途が限定されているからこそ、その釣りでは圧倒的に気持ちよく使える。
そんなロッドの世界が広がっています。
ショートロッドで楽しむジャークベイト

今月号の表紙を飾るのは、ヒロ内藤さん。
特集の最初に掲載されている「5ft2inに至る長い物語」は、今月号を象徴する記事です。
5ft2inは、現在のバスロッドとしてはかなり短いレングス。
近年は、岸釣りでもボートでも6ft〜7ft台のロッドが中心となっているため、5ft2inという数字だけを見ると、どのように使うのか想像しにくい方もいるかもしれません。
しかし、誌面に写るヒロ内藤さんのキャストやジャークの姿を見ると、その短さが必要な理由が伝わってきます。
シングルハンドルのロッドを握り、強い前傾姿勢から、素早くキャストとジャークを繰り返す。
Basser編集部ライブでも、取材を担当した大谷さんが、その姿を間近で見て「すごいものに出会った」と感じたことが語られていました。
現代では、シングルハンドルのショートロッドで一日中釣りをする人を見る機会自体が少なくなっています。
長いロッドで大きく動かすのではなく、手首や腕の小さな動きを、短いブランクを通して直接ルアーへ伝えていく。
ロッドを使ってルアーを動かしているというよりも、身体の動きそのものがルアーへ伝わっているように見えます。
ショートロッドには、遠投性能ではロングロッドに及ばない面があります。
一方で、近距離におけるキャスト精度、取り回し、ジャークベイトやトップウォーターの連続操作では、短さが大きな武器になります。
グリップエンドが身体や衣服へ当たりにくく、ロッドを下方向へ振りやすいのもメリットです。
この記事を読むと、あえてショートロッドでトップウォーターやジャークベイトを一日投げてみたくなります。
何より、ヒロ内藤さんの釣りをする姿が、とにかく格好いい。
スペックや効率だけでは説明できない、バスフィッシングのスタイルそのものに惹かれる記事でした。
ロングロッドで楽しむオカッパリ

ヒロ内藤さんの5ft2inと対極にあるのが、赤松健さんの7ft8inです。
記事タイトルは「7ft8inがど真ん中 ロングロッドの利点」。
7ft8inという数字だけを見れば、バスロッドとしてはかなり長く感じます。
ところが、赤松さんは少年時代に5ft8inのロッドから始まり、長さを追求して、一時は8ft11inまで伸ばした経験があるとのこと。
そこからさまざまな長さを経験したうえで、現在の7ft8inへたどり着いています。
極端なロングロッドまで試した結果、飛距離、操作性、取り回しのバランスが取れる長さとして、7ft8inを「ど真ん中」と判断しています。
ロングロッドのメリットとして、最初に思い浮かぶのは飛距離です。
長いストロークでルアーの重量をブランクへ乗せ、ロッド全体を曲げて投げることで、短いロッドよりも遠くへルアーを届けやすくなります。
しかし、長いロッドの役割は遠投だけではありません。
ティップを高く上げたり、横へ大きく移動させたりすることで、遠距離でもラインの角度を調整しやすくなります。
フッキング時には多くのラインを一度に動かせますし、ファイトでは長いブランク全体を使って魚の突進を受け止めることができます。
岸釣りや広大なフィールドでは、少し先に届くことが、そのまま釣果へつながる場面もあります。
ロングロッドは、単に遠くへ投げるためだけではなく、ルアー、ライン、魚との距離を管理するための道具でもある。
赤松さんの記事を読むと、ロッドの長さに対する見方が大きく変わります。
最新ロッドだけが優れているわけではない
今月号には、2026年モデルのSTEEZを扱う「それぞれのスティーズ」など、最新ロッドの記事も掲載されています。
一方で、ヒロ内藤さんのシングルハンドルや、チャンピオングリップ、昔ながらの素材や構造を持つロッドも、同じ特集の中で紹介されています。
新しいロッドは、軽さや感度、ブランクの強度など、さまざまな点で進化しています。
しかし、新しいロッドは古いロッドよりもすべてにおいて優れているとは限りません。
昔の素材だからこそ出せる曲がり方や復元速度、重量感があります。
最新の軽量ロッドよりも、ある程度重さのある古いロッドの方が、ルアーの重量を乗せて気持ちよくキャストできる人もいます。
これは懐古趣味というだけではありません。
たくさんの新しいロッドを試しても、最終的に昔から使っている一本へ戻ってくる。
そのロッドの曲がり方や重量バランスに身体が慣れ、自分のキャスト動作そのものが、そのロッドを基準に作られているからです。
ロッドのよさは、発売年や価格だけでは決まりません。
- 自分が使っていて気持ちよいか。
- 何度でも投げたくなるか。
- フィールドへ自然と持っていきたくなるか。
今月号を読むと、そうした数字に表しにくい部分も、ロッドの重要な性能なのだと感じます。
ロッドはリールやラインを含めて完成する
今月号を読んで、改めて思ったのが、ロッドとリールの組み合わせです。
ロッドは、一本だけで完成する道具ではありません。
同じロッドでも、取り付けるリールの重量やスプール径、巻くライン、投げるルアーによって、使用感は大きく変わります。
軽いリールが常に優れているわけではありません。
ロッドの重量、グリップ位置、ブランクの曲がり方と、リールの重量が合った時に、キャストが驚くほど気持ちよく決まる瞬間があります。
その組み合わせを見つけること自体も、バスフィッシングの楽しさのひとつです。
高価な最新ロッドを買ったのに、どうしてもしっくりこない時は、ロッドそのものをすぐに否定するのではなく、リールやライン、投げるルアーを見直してみる価値があります。
眠っていたロッドが、組み合わせを変えるだけで一軍へ戻ってくるかもしれません。
その他の注目記事
「LIMIT1」の対戦相手は泉和摩さん

特集以外で注目したいのが、「田辺哲男のLimit 1 vs 泉和摩」です。
今回の対戦相手である泉和摩さんは、田辺哲男さんにとって同企画で初めての年上の対戦相手ととなりました。
印象的だったのが、両者のタックルの違いです。
泉さんのタックルには、ハンクルのルアーが並びます。
一方、田辺さんのタックルには、メインベイトがワカサギである榛名湖に対して、5インチのフリップギルを絡めたルアーが数多く結ばれていました。
タックルを並べた時点で、二人がどのような魚を、どのような展開で狙おうとしているのかが見えてきます。
単なる釣果対決ではなく、ルアー選びやタックル構成から、二人のバスフィッシング観が伝わってくるのが「リミット1」の面白さです。
今回も、経験豊富な二人がどのような釣りを組み立てていくのか、読み応えのある内容でした。
金森隆志さんのダンジョン

「金森隆志の“ダンジョン”」も、非常に興味深い記事です。
取材初日は晴天で、35cm以上のバスが約30尾釣れる好調な展開。
翌日は曇りと雨になり、さらに釣れるのではないかと思われたものの、予想に反して魚の反応が大幅に落ちたそうです。
初日に釣れていた参加者が2日目に苦戦する一方、初日に釣れなかった参加者が、2日目には良型を複数キャッチ。
天候の変化によって、釣果の順位が大きく入れ替わりました。
雨やローライトになると、バスの活性が上がって釣りやすくなる。
そのようなイメージを持っている方は多いと思います。
しかし、天候が変わることで魚が散ったり、居場所そのものが変わったりすることもあります。
「雨だから巻けば釣れる」といった単純な話ではなく、天候変化によってバスがどこへ動いたのかを考える。
状況変化への対応力を学べる記事でした。
また、記事内ではレイドジャパンの話題の新商品「スライスフィッシュ」も登場してました。
私も実際に購入しましたが、紙面では実釣時に金森さんがどのような考えで投入しているのかを垣間見ることが出来て、非常に参考になりました。
西川慧さんによる「他ギル系」解説

西川慧さんの「新技開発委員会」も、実釣へ直結する内容として注目です。
今回登場するのは、ハイドアップから2026年7月に発売された「コイケフィッシュギル」。
コイケシリーズといえば、中央のボールを取り囲む多数の毛やパーツが水を受け、独特の存在感と食わせの間を生み出すルアーです。
コイケフィッシュギルでは、その毛に当たる部分が、薄いブルーギル型のパーツへ置き換えられています。
ただし、単にギルの形をしたワームというわけではありません。
中央のボールをひとつのエサ、周囲のギル型パーツをそれに群がる稚ギルとして見せることで、ルアー全体をギルの群れや集合体として演出する設計になっています。
実際に動かすと、薄いギル型パーツが細かく震えるだけでなく、「パタパタ」「ボワンボワン」とした強い水押しが発生します。
一般的な多毛系コイケとは、水を押す感覚やシルエットが大きく異なり、従来のコイケでは出せなかった存在感を持っています。
西川プロの記事を読むことで、完成品の形だけでは分からない、コイケフィッシュギルの開発意図をより深く理解できました。
すでに私自身も実物を使ってインプレ記事を書いていますが、誌面で開発側の発想を知ると、ギル型パーツの動きや強い水押しを、より意識して使いたくなります。
従来のコイケシリーズが好きな方はもちろん、稚ギルが多いフィールドで新しい食わせ方を試したい方にも、非常に興味深い記事でした。
Basser 2026年8月号 のレビュー

- ショートロッド・ロングロッドの対比から、ロッドレングスの意味を具体的に学べる
- 最新スペックだけでは分からない、ロッドと釣り人の相性を考えられる
- リール、ライン、ルアー重量まで含めたタックルバランスを見直せる
- Limit 1や「ダンジョン」、西川慧さんの多ギル系解説など、特集外の記事も読み応えがある
- 万能ロッドを一本選びたい初心者には、やや専門的に感じられる
- ロッドの投げ心地や重量バランスは、誌面だけでは完全に判断できない
- ロッドやタックルセッティングへの関心が薄い人には、特集の熱量が濃く感じられる
Basser 2026年8月号 概要

| 雑誌名 | Basser 2026年8月号 |
| 出版社 | つり人社 |
| 発売日 | 2026年6月26日 |
| 定価 | 1,320円(税込) |
Basser 2026年8月号の目次
- 22 モノの舞台裏
- 26 5ft2inに至る長い物語 | ヒロ内藤
- 32 接近戦ジャークベイト用「超低弾性×ステップテーパー」 | 村中義明
- 36 ZIGZAGガイドシステム 感度の塩梅 | 青木哲
- 38 チャンピオングリップの誤解 | 渡辺雄三
- 40 7ft8inがど真ん中 ロングロッドの利点 | 赤松健
- 44 チューブラーとソリッドの2刀流 マイクロベイトの中層攻略 | 佐々一真
- 46 しなやかに曲がるジャイアントベイト用ロッド・スローン | サタン島田
- 48 超ロングスピニングを作らせたジグヘッドスイミングの魅力 | 新保匠太
- 50 しっかり背負って投げられる5ft8in | 福永悠野
- 52 島津グラスの技術 | 島津靖雄
- 56 それぞれのスティーズ | 川村光大郎 | 佐々木勝也 | 藤田京弥
- 62 テイルウォーク アウトバック・パピー 編集部インプレッション
- 66 メジャークラフトの異端児 デイズ360 | 古瀬泰陽
- 68 DRTロッドが長い理由 | 白川友也
- 70 粘りで獲る。宮廣祥大のたどり着いた琵琶湖ロッドとは?
- 74 ハイドアップ西川慧の新技開発委員会
- 78 金森隆志の“ダンジョン”
- 84 米国トーナメント最前線
- 98 田辺哲男のLimit1 vs 泉和摩
- 108 ファイト、ファイト、コジコジ!
- 110 房総HOTSPOT
- 114 JB/NBCが見据えるバスフィッシングの未来
- 116 U-30 ドリームトーナメント
- 118 W.B.S.
- 120 H-1グランプリ
- 122 私と車とバスフィッシング
- 126 トップウォーター春夏秋冬
- 132 Rods.jpを知っていますか?
- 134 新訳 バスフィッシング教書
- 138 NPO ミズベ新聞
- 140 The Japan Original
- 144 バサー図書室
- 144 日釣振ニュース
- 146 編集後記

まとめ:短い竿と長い竿、正解は自分の釣りの中にある

つり人社の『Basser(バサー)2026年8月号』の見どころをレビュー紹介してきました。
今月号は、ショートロッドやロングロッドを、単に珍しい道具として紹介する特集ではありません。
- それぞれの長さや構造が、なぜ必要になったのか。
- どのような釣りを突き詰めた結果、その個性へたどり着いたのか。
ロッドの背景にある釣り人の考え方まで掘り下げた一冊です。
ヒロ内藤さんの5ft2inは、身体とルアーを近づけ、鋭く、リズミカルに操作するための長さ。
赤松健さんの7ft8inは、距離とラインの角度を管理し、遠くの魚と確実にやり取りするための長さです。
一見すると正反対の2本ですが、共通しているのは、流行や標準に合わせて選ばれたロッドではないということ。
自分の釣りを突き詰めた結果として、その長さが選ばれています。
そして、ロッドは長さだけで完成する道具でもありません。
リール、ライン、ルアー重量、釣り場、キャスト動作。
それらが組み合わさって、初めて自分にとって気持ちよい一本になります。
今月号を読み終えると、手持ちのロッドとリールの組み合わせを、改めて見直したくなるはずです。
昔使っていたショートロッドを引っ張り出したくなる人もいるでしょう。
ロングロッドにお気に入りのトップウォーターを結び、思い切り遠投したくなる人もいるかもしれません。
スペック表では説明できなくても、投げた瞬間に「これだ」と感じるロッドがあります。
5ftでも、8ftでも、それが自分の釣りに合っていれば正解です。
今月号のBasserは、流行やスペックだけではなく、自分の感覚を信じてロッドを選ぶことの面白さを思い出させてくれました。
ロッド選びで迷っている方はもちろん、古いロッドをなかなか手放せない方や、自分だけのタックルセッティングを追求したい方にも、ぜひ読んでほしい一冊です。





