【Basser 2026年9月号レビュー】「急がない釣り」がバス釣りをもっと面白くする&アメリカの「コイケ」ブームから見える日本の釣り業界の閉塞感。

【Basser 2026年9月号レビュー】「急がない釣り」がバス釣りをもっと面白くする&アメリカの「コイケ」ブームから見える日本の釣り業界の閉塞感。
  • ワームならもっと簡単に釣れるかもしれない。
  • 魚が沈んでいるなら、水面にこだわる理由もない。

それなのに私たちはときどき、無性にトップウォータープラグを投げたくなります。

お気に入りのプラグをキャストして、波紋が消えるまで待つ。

ゆっくりと動かした瞬間、突然水面が割れる——。

水面を割って出てきた魚はいつまでも記憶に残り、そこには釣果や効率だけでは説明できない特別な面白さがあります。

つり人社より発売された『Basser(バサー)2026年9月号』は、そんな水面の釣りを愛する人々に焦点を当てた特集「トップウォータープラッガー」です。

今月号は、単なるトップゲームのハウツー解説ではありません。

ルアー、タックル、フローターやボートといったアイテムから、釣具店、そして古くからの道具を愛する釣り人たちまで。

そこにはトップウォーターという「釣り方」を超えた、「遊び方」そのものが描かれています。

今回は、そんな『Basser(バサー)2026年9月号』の中から、特に印象に残った記事や、改めて考えさせられた「バスフィッシングを楽しむ」ということについてレビュー紹介していきます。

Basser(バサー)2026年9月号
つり人社
Basser(バサー)2026年9月号
この記事を書いた人
Riku
Riku
釣りブロガー

釣り歴33年の釣りオタクでBassblogの運営者。バス釣り、ソルトルアー、トラウト等の新製品情報からインプレ・ノウハウまで「釣りが、もっと楽しくなる!」記事を発信。最新流行の釣りからオールドスクールな釣りまで幅広く楽しむ。

特集:トップウォータープラッガー

「トップウォータープラグ」ではなく、「トップウォータープラッガー」特集。
「トップウォータープラグ」ではなく、「トップウォータープラッガー」特集。

「トップウォータープラグ」ではなく、「トップウォータープラッガー」。

今月号の特集タイトルを見たとき、この言葉の違いがすべてを物語っていると感じました。

ルアーではなく、人に焦点が当てられた特集だということです。

通常のルアー特集であれば、どんなアクションが効くのか、どんな場所で使うのかという「攻略法」がメインになるでしょう。

しかし今月号は違います。

実際の釣りに役立つ情報も押さえつつ、何よりも「そのルアーを愛し、投げ続けている人たち」の生き様が描かれているのです。

目次には、「急がない美学 ~ローカルに乗って~」をはじめ、「言葉の魔法が解けなくて」「フローターフィッシングの楽しみ方」など、バラエティ豊かな記事が並びます。

正直なところ、最初は「自分の普段の釣りとは無縁の世界かも」と思うものもありました。

しかしページをめくると、たちまちそのディープな世界に引き込まれます。

ハンドコンエレキ、フローター、カヤック…普段の自分のスタイルとは違っても、学べる要素や新しい楽しみ方が数多くあることに気づかされます。

バス釣りを、単なる釣果だけで終わらせてしまうには、あまりに勿体ない。

ブラックバスとは、アングラーの数だけ奥深い楽しみ方が存在する魚なのだと、あらためて思い知らされました。

ただトップウォーターでの釣り方を勉強するのではなく、トップで遊ぶ人たちの世界観を通して「こういう楽しみ方もあるんだ」と、知らない世界を覗き込むように読める素晴らしい特集です。

急がない釣りの楽しさ

急がない美学 ~ローカルに乗って~
急がない美学 ~ローカルに乗って~

特集の最初に置かれている記事が、「急がない美学 ~ローカルに乗って~」というのが、非常に印象的です。

現代のバスフィッシングはテクノロジーやルアーが驚くほど進化し、釣果の追求が容易になりました。

もちろんそれも釣りの大きな醍醐味ですが、効率や釣果への執着は、時に釣りをつまらなくする原因にもなります。

SNSやYouTubeを開けば、溢れる釣果自慢や「これが釣れる」「これが便利」という主張合戦。

それに疲れ果てている人も少なくないはずです。

一方で、トップウォータープラグだけを投げ続けるような釣りは、決して効率的ではありません。

魚が沈めば不利になり、一日中何も起きない可能性すらあります。

それでも水面へルアーを投げ続ける人たちには、「何匹釣れたか」とは別の尺度で楽しむ世界があるのです。

それを大きく象徴しているのが、この記事の冨山栄二さんの釣りです。

冨山さんのブランドLOCALは、新幹線のような効率重視の特急ではなく、ローカル線のようなニュアンスから来ているといいます。

釣り場で本命ポイントに直行するのではなく、各駅停車の電車が停まった駅の風景をのんびり楽しむ旅のように、ふらりふらりと道中の寄り道を楽しみながら釣りをしているように感じました。

釣り場に到着して、人気ポイントに我先に入ろうと、鼻息荒く足早に向かうアングラーとは、見ている世界が違う。

ヘレン・ケラーが随筆『Three Days to See(もし三日間だけ目が見えたなら)』の中で、

“Yet, those who have eyes apparently see little.”
「ところが、目の見える人たちは、実際には身の回りのものをほとんど注意して見ていないようです。」

と言っているのを思い出します。

各駅停車の旅のような釣りは、同じ景色の中にいたとしても、自分の視点や心のあり方を変えるだけで、多くの素晴らしいものに気づけるということを教えてくれます。

新幹線では見えない景色がローカル線では見えるように、スクリーンばかり見て効率を重視していると、私たちは大切なものを見失います。

このような楽しみ方は、バス釣りという枠を超えて、人生そのものを豊かにする心を育んでくれるものだと思います。

その他の気になった記事

ここからは、特集以外で気になった記事を紹介していきます。

釣りにおける食事の大切さ

伊藤巧と「E-NA」の付き合い方
伊藤巧と「E-NA」の付き合い方

1つ目に紹介するのは、伊藤巧さんが飲んでいるプロテインと食事に関する記事です。

ご存知の通り、伊藤巧さんはアメリカのバスマスターエリートシリーズに参戦しており、私たちには想像しにくいほど過酷なスケジュールをこなしています。

そのような生活の中では、いかに効率的に身体に良い食事をするかが問題になってきます。

この記事では、そんな伊藤プロの食事方法やプロテインの活用方法が詳しく解説されています。

私たちサンデーアングラーには関係のない世界かと思うかもしれませんが、そうでもありません。

私たちも、休日の限られた時間を最大限楽しみたいものです。

仕事の合間にやっとフィールドへ出られたのに、いざ湖上に立つと疲労感や眠気ばかりで釣りに集中できないのなら、楽しみも半減するでしょう。

こうした疲労感や眠気には、睡眠不足だけでなく食事も関係しており、食事のとり方によってある程度改善できるということです。

だからこそ、この記事は、釣りを楽しむために非常に参考になる内容だと感じました。

これを読めば、いつもの早朝のコンビニで買うものが変わる。

そんな記事になっています。

JB TOP50 第2戦 弥栄湖レポート記事

JB TOP50 第2戦 弥栄湖レポート記事
JB TOP50 第2戦 弥栄湖レポート記事

「急がない釣り」とは、まさに対極となる「トーナメント」の記事です。

この記事では、JB TOP50 第2戦 弥栄湖で優勝した青木大介プロの釣りの解説をメインに、その他の選手の動きや釣りをレポートしています。

現在大流行している「プロップヘアーボール」が生まれた経緯や、その使い方やタックルなどが詳しく解説されています。

トーナメントは「釣果」が最重要であり、その結果は、数字として明確に出てしまう厳しい世界です。

トーナメントを見る側としては、それをどう楽しむか、そこから何を学ぶかが大切です。

単に結果のスコアと誰がどのルアーでどこで釣ったのかを知っただけでは、何も学ぶことはできません。

釣果を最大化するために、各選手が何を考え、どう動き、その結果、何が起きたのか?

試合という極限状態で戦う選手の思考から学べることは非常に多く、それを自分の釣りにどう活かしていくかが大切であり、そこから新しい発見が生まれるはずです。

実際の休日の釣りとは大きく異なる世界ですが、だからこそ、自分では考えられないような発想があって非常に学びの多いトーナメントのレポートです。

アメリカの「コイケ」ブーム

米国トーナメント最前線|「コイケ」に何が起きたのか。
米国トーナメント最前線|「コイケ」に何が起きたのか。

この記事では、現在アメリカで起こっている「コイケ」ブームについて詳しく解説されています。

2026年に入り、アメリカの主要トーナメントではコイケや類似するアーチン系ベイトが相次いで優勝や上位入賞に絡み、多くのトッププロが試合で使う一大トレンドになっています。

これまで、藤田京弥プロや伊藤巧プロはこのコイケを隠しながら試合で使ってきていましたが、それがとうとうバレてしまい、今シーズンは使い方も含めてアメリカで急速に浸透しています。

アメリカの「コイケ」ブームに思うこと

日本ではあまり見られないことですが、アメリカでは多くのメーカーから類似品と呼べるような似たフォルムの商品が大量に作られており、さらに、それを使うフックやシンカー類も含めると多毛系(アーチンベイト)の経済効果は非常に大きなものとなっています。

日本と違ってアメリカらしいなと思うのは、メーカーが類似商品などを厳しく規制することなく、業界全体での経済効果に乗っかっているように見えるところです。

もちろん、オリジナルの利益を大きく侵害するようなコピー品はNGでしょうが、日本よりも類似品に対してかなり緩いように感じます。

コイケに限った話ではありませんが、日本では、類似商品に対して非常に厳しいところがあるように思います。

その結果、市場に代替品がほとんどない状態になり、それが転売の温床になっているように感じるところもあります。

メーカー側も、生産量を計画的に増やしてくれる非常に良心的で男気に溢れたメーカーもありますが、そんなメーカーはごくわずか。

現在の転売目的による人気商品の買い占めと高値売買、そして、本当に欲しい人が定価で買えない環境は、業界自体の首を絞めているように感じるところもありますが、実際どうでなのでしょうか。

アメリカでも、もちろんオリジナルの「コイケ」は高額転売されていますが、他のメーカーからの代替商品があるため、それで満足している人もいるでしょう。

実際に、ジェイソン・クリスティーがエリートシリーズ第7戦で優勝した時に使っていたウイニングルアーは、コイケ・フルキャストを型取りして作られたと思われるコピー品でした。

アメリカは、最高峰の公式トーナメントでも、クリスティーほどのビッグスターがコピー品を使って堂々と優勝できる世界ということです。

しかも、このコピー品による優勝は、バッシングされるどころか、コイケブームにさらなる加速をもたらしています。

もしこれが日本だったら、メーカーの正規品ではないコピー品で優勝したプロはとんでもない炎上をしてしまいそうですよね。

アメリカは、釣れるルアーが出てきたら、業界全体でたくさん釣って楽しみをシェアして盛り上がり、釣り人口も増えてハッピーという自由さを感じます。

類似品のあるアメリカでは選択肢が多く用意されており、転売が嫌なら買わずに他のメーカーの商品を使うことができるので、結果的に日本のような転売ヤーが笑っているような状況にはなりにくいのではないかと思います。

人気の釣り方で釣りを楽しみたくても、そこで使うルアーを買うことができないのなら、そもそも楽しむことさえできません。

ハッピーどころか、流行りの釣りを楽しめない悔しさや、転売に対する怒りなどの、負の感情ばかりが渦巻いていそうです。

日本の閉鎖的な空気も、変わって行ってほしいものです。

日本人の言う「バスフィッシングらしさ」への違和感

また、この記事を読んでいて思ったのは、アメリカ人は非常に柔軟だということです。

アメリカはバスフィッシング発祥の地であり、そこにある歴史や伝統は日本の比ではありません。

にもかかわらず、いかにもルアーらしくない「コイケ」が釣れると分かれば、すぐに取り入れて使い倒しています。

コイケブームの前には、藤田プロが優勝したときに注目されたサカマタシャッドをはじめとするミドストのブームもありましたし、FFSを使ったライブシューティングをアメリカに持ち込んだのも日本のトーナメンターと言って良いでしょう。

どちらもアメリカではなく日本で生まれた釣り方であり、アメリカの伝統の外から入ってきたものです。

こんな事を書いたのは、少し前に日本のトーナメントのワンシーンが抜き取られて炎上した出来事があったからです。

アメリカ人でさえ興味津々の技術やルアーが作り出されている日本のトーナメントシーンは、本来、日本人の誇るべき文化です。

『Basser』も現在ではアメリカ人読者が多く、教科書として扱っているアメリカ人も少なくないそうです。

日本には、謎の「バスフィッシングらしさ」を声高に主張する人が、とりわけネットやSNS上に多くいるように感じます。

ハードルアーを巻くのが正義、ライブスコープやワームはバス釣りじゃないなど。

それは、「電話はダイヤル式の黒電話でないとおかしい。スマホは電話じゃない。ダイヤルを回すのが正義。」と言っているのと同じように思います。

このような、昭和から時間が停止したような固くて古いバスフィッシング観がどうして日本に根付いてしまったのかは謎ですが、『Basser』を毎月読んでいると、そんな意見とは対象的に、実際のアメリカではバスフィッシングが刻々と進化しているのを感じます。

現在のアメリカでは、おそらく多くの子供たちが「コイケ」に夢中であり、コイケで楽しくバスを釣って、バス釣りの楽しさを覚えて育っているはず。

カッコいいかどうか、バスフィッシングらしいかどうかなんて、子どもたちにはどうでも良くて、水辺で楽しい時間があればそれだけでバスフィッシングは最高であるはず。

子どもにとっては、大人が決めた楽しさではなく、自分が感じた楽しさが心に残っていくはずです。

日本だけの狭い情報に閉じ込められることなく、外の世界で何が起きているのかを知っておくことは、非常に重要であり、それを教えてくれるのが『Basser』です。

今月号のアメリカの「コイケ」ブームの記事を読んで、そのことを改めて感じました。

Basser 2026年9月号 のレビュー

Basser 2026年9月号 レビュー
Basser(バサー)2026年9月号
Basser 2026年9月号
つり人社
Basser 2026年9月号は、「トップウォータープラッガー」特集。トップウォータープラグの使い方だけではなく、ルアー、タックル、フローター、釣具店、オールドプラグなどを通じて、トップウォーターフィッシングという遊び方そのものを掘り下げた一冊。
総合評価4.0 / 5.0
今月号を読み終えて強く残るのは、「もっとトップウォーターが上手くなりたい」という気持ちだけではありません。もっと自由にバス釣りを楽しんでもいいんだという感覚です。最新の釣れるルアーを追いかけてもいい。昔のルアーだけを持って釣りへ行ってもいい。大会に出てもいい。フローターでのんびり浮いてもいい。その日の自分がどんな一匹に出会いたいのかによって、釣り方を変えていい。そんな当たり前だけれど忘れがちなことを、トップウォータープラッガーたちの姿から思い出させてくれます。
メリット
  • トップウォーターをルアーテクニックだけでなく、文化や釣り人のスタイルまで含めて楽しめる
  • フローターや表層攻略など、実際の釣りにつながる記事もある
  • JB TOP50、米国トーナメント、Only Flippin’など特集外も読み応えがある
  • 2026年時点のトップウォーター文化を残した資料としても面白い
デメリット
  • 即効性のある最新テクニックだけを求める人には、前半はかなり趣味的に感じる可能性がある
  • トップウォーターそのものに興味が薄い人には、特集の世界観が濃く感じられる
  • トップウォータールアーの使い方を体系的に網羅する「教科書型」の特集ではない

Basser 2026年9月号 概要

Basser(バサー)2026年9月号の目次
Basser(バサー)2026年9月号の目次
雑誌名Basser 2026年9月号
出版社つり人社
発売日2026年7月24日
定価1,320円(税込)
Basser 2026年9月号の目次
  • 20 急がない美学 ~ローカルに乗って~ | 冨山栄二
  • 28 言葉の魔法が解けなくて | 山形タケシ
  • 30 マグナムエキスパートペラ | 松井友宏
  • 34 オールドトップウォーターへのニンジャ的斬り口とノスタルジー | センドウタカシ
  • 38 うらしま堂の定休日 | 渡辺雄三×須田博之
  • 42 フローターフィッシングの楽しみ方 | 荒井謙太
  • 48 クランポ3兄弟 | 宮嶋駿介
  • 54 羽生式表層術
  • 58 伊藤巧と「E-NA」の付き合い方
  • 60 JB TOP50
  • 70 天井破り | 三原直之
  • 78 加木屋守の“スタメン!”
  • 84 米国トーナメント最前線
  • 98 モノの舞台裏
  • 100 STEEZ 20周年記念トーナメント
  • 104 Only Flippin’ | 馬路久史
  • 110 房総HOTSPOT
  • 114 イヨシ、おごります!
  • 116 MLF Japan
  • 118 JB/NBCが見据えるバスフィッシングの未来
  • 120 H-1グランプリ
  • 122 ハイドアップ西川慧の新技開発委員会
  • 131 MLF Japan Shore Attack Pro League
  • 132 The Japan Original
  • 134 新訳 バスフィッシング教書
  • 136 ファイト、ファイト、コジコジ!
  • 138 NPO ミズベ新聞
  • 144 バサー図書室
  • 144 日釣振ニュース
  • 146 編集後記
Basser(バサー)2026年9月号
つり人社
Basser(バサー)2026年9月号

まとめ:

Basser(バサー)2026年9月号
Basser(バサー)2026年9月号

つり人社の『Basser(バサー)2026年9月号』の見どころをレビュー紹介してきました。

今月号のBasserを読んで改めて感じたのは、バスフィッシングの楽しみ方に正解はないということです。

効率を度外視して水面が割れる瞬間だけを待ち続けるトップウォータープラッガーたちがいる一方で、過酷なトーナメントを極限の思考で戦い抜くプロがいて、形にとらわれず釣れるルアーを純粋に楽しむアメリカの最新シーンもある。

そこには「どれが正解か」という基準はありません。

SNSでの釣果競争や、「バス釣りはこうあるべき」といった息苦しい固定観念、「こう釣らなければならない」と誰かが決めた遊び方に自分を合わせる必要はないのです。

もっと自由に、自分が心から面白いと思える釣りを見つけるために水辺に立てばいい。

今月号の『Basser』は、そんな釣り人が本来持っているはずの純粋なワクワク感を呼び覚ましてくれる一冊でした。

気になった方はぜひ手に取ってみてください。